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医療講演・メディア記事

ドクターになったサッカー少年02

文:大沼 寧 山形徳洲会病院 整形外科部長

最高の状態で選手を送り出す医師の役割

ついにW杯が開幕、優勝候補のブラジルを中心に好ゲームが繰り広げられている。W杯は、リアルタイムで観戦しなければ盛り上がらない。当分、寝不足は覚悟しよう。
さて、今回はサッカーのメディカルサポートについて話そう。私は神奈川と山形の両県で、地元の小学生チームからプロであるモンテディオ山形まで、さまざまなチームのサッカー選手のメディカルサポートを行っている。このサポートは監督やコーチと連携し、トレーナーと協力しながら、主役である選手をより良い状態でグラウンドに送り出すのが目的だ。

選手のケガの予防・治療から栄養指導、体調管理などのコンディションづくりまで、その内容は多岐にわたる。
ケガの治療では、試合日程や選手の置かれている状況に合わせて、治療法とそのタイミングを選択する。手術が必要な場合でも、試合日程によって回避することもあれば、治療・回復期間を短縮させるため積極的に行う場合もある。その時々で適切な選択、時には難しい判断を下さなければならない。
常に〝選手自身にとっての最善の道とは〟と自問しながら、総合的に判断することが大切だと感じている。そこでは、私自身がサッカー選手だった時に悩まされた数々のケガや病気の経験が役立っている。
国内でのサッカー競技を取り巻く環境は、1993年のJリーグ発足とともに目覚ましく改善された。若い選手の海外遠征や合宿でも、必ず医師が帯同している。あらゆるサポートが手厚過ぎて過保護ではないかと懸念されるほどだ。

海外には、劣悪な環境から這い上がって一流の選手になっている者も多くいる。若い世代には過保護なサポートよりも、ケガや障害に対する知識を与えて、自らが調整する「セルフコンディショニング」能力を伸ばす指導が大切だろう。

医療人として学ぶべき積極的な姿勢とプロ意識

私はメディカルサポートを通じて、多くのことを学んできた。
たとえば海外の遠征試合では、スタッフも選手も初対面。選手は試合に出場するために積極的に自分をアピールし、スタッフはより早く自分の考えが明確に伝わるように努力する。このような選手やスタッフの積極的な姿勢には、学ぶべき点がたくさんある。

来年も今のポジションが保障されているわけではない選手たちは、自らの可能性を信じて常にチャレンジしている。その姿には、甘えや妥協は見られない。
これは、私たち医療人にとっても大切な心構えだ。彼らに負けず、高いプロ意識で常にチャレンジしていきたいと思う。

2006年(平成18年)6月26日 No.522 5面より

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