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医療講演・メディア記事

なるほど健康講座09「膝の話(3)」

大沼 寧 山形徳洲会病院 整形外科部長

今回はよくある質問にお答えしましょう。

「膝に水が溜まる」ってどういうこと?

膝関節内には正常でも数ccの関節液という液体が存在します。この関節液は粘り気がある粘稠性(ねんちょうせい)の液体で、関節の潤滑油の役割や関節軟骨へ栄養を運ぶ役割をしています。

関節液が「水」に!

膝関節内に炎症が生じるとこの関節液が増加し、俗に言う「膝に水が溜まる」状態になります。関節液の粘ちょう性は低下し、本来の関節液の機能は失われて文字通り「水」のような存在になってしまうのです。

膝の痛みの原因に

「水」(本来は関節液!)が溜まると関節の袋である関節包が引き伸ばされ、膝周囲が腫れぼったく、重苦しさを自覚します。
炎症が続いている間は関節内の「水」は貯留し続け、炎症が治まると水は自然に少なくなります。

膝の水を抜くとクセになるって聞いたけど?

「水」が多量に長期にわたって貯留し続けると、関節に悪影響を及ぼします。膝の炎症による症状に加え、「水」の貯留による重だるい感じが加わります。

だるい症状は軽減

このことから、多量の「水」が長期に溜まり続けると見込まれる時、膝の機能改善と症状の軽減のために医師は「水」を抜く処置をします。異常に増加した「水」(重ねて言いますが本来は関節液です!)を抜くことで膝のだるい症状は軽減します。

クセには「なりません」

また採取した「水」を調べることで炎症の原因を突き止める手がかりにもなります。「水」を抜く処置と同時に膝の炎症を抑える治療が開始されますので、これら一連の治療は症状の軽減を図ると同時に関節液の正常化(軽減)に努めているのです。膝の水を抜くとクセになるということは決してありません。

膝痛に効果的なのは 温シップ? 冷シップ?

冷感シップは保湿性に優れた基材を使用し、さらにメントールなどの清涼感を加えているため冷たい感じがします。
ただ実際には冷却効果は乏しく、含有している消炎鎮痛薬の効果をメーンに作られているものです。
打撲や捻挫(ねんざ)の手当てに患部を冷やす処置が大切であることは皆さんもご存知だと思いますが、冷感シップでは冷却効果は不十分であり、氷を用いてアイシングをすることが薦められています。
以上より、温感シップは温感効果と血行促進効果に期待して慢性の膝痛にはいいでしょう。急性の膝痛には適しません。
冷シップは消炎鎮痛効果に期待して急性の膝痛と慢性の膝痛の両方に使うことができます。貼った時の冷感がイヤな時には、表面を温めて冷感を軽減させてから使用するといいでしょう。
いずれのシップも皮膚のかぶれに注意し、短時間から使用することをお奨めします。

膝痛に温泉は良いの?

慢性の腰痛と同様、慢性の膝痛に対しては温泉の血行促進効果などによって多くの場合、症状は緩和されます。
ですが急性の場合は温泉に入ることは症状が悪化する危険性があります。膝が腫れ、熱感を感じるような急性の症状に対してはアイシング処置がお勧めでしょう。
温泉で温めると、その時は楽に感じても夜間に腫れの増強と同時に痛みが増し、ヒドい目に合うこともありますのでくれぐれもご注意を!

次回は「病院ではどんな治療をするの?」についてお話しましょう。

2007年(平成19年)12月28日 金曜日 第31号 6面より

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